バーチャルオフィス・コワーキングスペースなどの違いを比較!機能や特徴など
昨今では珍しくなくなったバーチャルオフィスやコワーキングスペース。特に異常気象の影響で自然災害が増えており、大手企業もBCPの重要性から本社以外でも働けるサテライトオフィスやシェアスペースなどの利用に乗り出してきています。
ところで、バーチャルオフィスとコワーキングスペースなどの明確な違いをご存知でしょうか。
何となく「色んな業種の人が共同で仕事をする場所」とイメージされている方も多いかと思います。そんなイメージも大きく外れていませんが、実はバーチャルオフィスやコワーキングスペースといったオフィス形態には違いがあります。
そこでこの記事では、ここ数年で利用者が増加したバーチャルオフィスやコワーキングスペースなどの違いに着目。それぞれのスペースにどんな特徴があるのかまとめました。
自分のイメージするオフィス形態との違いについて、この機会にぜひご覧になってみてください。

バーチャルオフィスの特徴と機能
「バーチャルオフィス」とは、実際に事務所を借りない仮想のオフィス。個人事業主や副業といった規模で事業を行う方が多く利用しています。特に自分で事務所を借りずに自宅で仕事をしていても会社登記できるのが、バーチャルオフィスの一番のメリットであり特徴の一つと言えるでしょう。
バーチャルオフィスを他のオフィスと比較したときの特徴や機能性をご覧ください。
場所の選びやすさ | 選びやすい |
---|---|
利用可能時間 | 自由 |
料金・費用 | 安い |
他利用者とのコミュニティ形成 | 不要 |
会社登記の可否 | 可能 |
バーチャルオフィスと他のオフィスにおける大きな違いは、主に住所貸しがメインであるという点。
例えば在宅でネットショップの仕事をする際、公開するサイトには事業主の住所や氏名を記載しなければいけません。ただプライバシーを考えると個人が特定される情報ですから、できるだけ情報を伏せたいと多くの方が望みます。
バーチャルオフィスを利用すれば、バーチャルオフィスの住所をそのまま記載できますし、会社登記も可能です。
在宅で仕事をする主婦の方、匿名で仕事を請け負うフリーランスの方にはピッタリのオフィス形態と言えるでしょう。
バーチャルオフィスのメリット・デメリット
バーチャルオフィスの特徴として、他にも以下のようなメリットやデメリットが挙げられます。
メリット | デメリット |
---|---|
・オフィス利用料を大幅に削減できる ・起業時の費用が安く済む ・プライバシーの保護が可能 ・都内一等地の住所で開業できる ・事業開始までがスピーディ |
・法人名義の銀行口座が開設しづらい ・事業内容によって許認可が取れない ・他の会社と住所が重複する ・郵便物の受け取りに時間がかかる ・融資や労務関連の申請における信用が低い |
バーチャルオフィスは他のオフィス形態とは比較にならない手軽さ故に、社会的な信用という面がまだ確立されていません。今でこそ法人登記をすれば銀行口座も開設できますが、銀行融資の審査を始めとして、社会保険や雇用保険の申請も普通より手間がかかるケースがあります。
コワーキングスペースの特徴と機能
「コワーキングスペース」とは、仕事場を共有するスペースを指します。一つのオフィス空間を複数人で共有して使用するオフィスです。オフィスという形態でありながら、他の利用者とのコミュニケーションを図れるという点が大きな特徴。
ではコワーキングスペースを他のオフィスと比較してみましょう。
場所の選びやすさ | 運営会社による |
---|---|
利用可能時間 | 利用プランによる |
料金・費用 | 安い |
他利用者とのコミュニティ形成 | 可能 |
会社登記の可否 | ほぼ可能 |
コワーキングスペースを利用する際の費用は、時間単位制(ドロップイン)と月額料金制に分かれます。
時間単位制のドロップインで利用する場合、安いコワーキングスペースなら1時間500円程度です。月額料金制で安いコワーキングスペースなら、月1万円程度が相場。イニシャルコストという点で見ても、大きな負担にはなりません。
またコワーキングスペースでは、定期的にイベントや勉強会、セミナーなどを開催しています。自分の仕事とは違う業種の人と知り合えるため、事業のアイディアや情報共有ができるという魅力もメリットの一つです。
コワーキングスペースのメリット・デメリット
コワーキングスペースでも会社登記は可能ですが、一部の運営会社では登記不可のケースもあります。そのため利用の目的をしっかり持ち、コワーキングスペースの利用で仕事に支障が出ないかの確認が重要です。
その他、コワーキングスペースのメリット・デメリットを見てましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・低いコストで利用できる ・必要な設備を自由に利用できる ・利用プランのバリエーションが豊富 ・出張や商談前の打ち合わせに利用できる ・人脈を広げられる |
・周りに人がいるため集中できない ・コミュニティが内輪ノリになりがち ・人が多いと作業スペースが狭くなる ・必ずしも良いコミュニティを築けるとは限らない ・業務上の情報漏洩の可能性 |
コワーキングスペースは、海外が発祥のオフィス形態です。そのためコミュニティ形成によるビジネスの開拓という色が強く、必ずしも日本人の気質に合うとは限りません。実際に人間関係が悪くなり、コワーキングスペースを利用しづらくなったという体験談もあるほどです。
ただ人とコミュニケーションを取ることでモチベーションが上がるとか、周りを気にせず仕事ができるのであればコワーキングスペースもオフィスとして選択肢の一つでしょう。
利用料金も高くありませんので、事業におけるイニシャルコストを下げたいという方にはオススメです。
シェアオフィスの特徴と機能
コワーキングスペースに非常によく似た「シェアオフィス」という形態もあります。一つの空間を共同で利用するオフィス形態ですが、コミュニティの形成や他利用者と情報交換するということは多くないのがコワーキングスペースとの違いです。
そう考えると、チェーン展開している人気のカフェ店でそのまま仕事をするというイメージでも大きく間違ってはいません。
ではシェアオフィスの特徴を見てみましょう。
場所の選びやすさ | 運営会社による |
---|---|
利用可能時間 | 利用プランによる |
料金・費用 | 安め |
他利用者とのコミュニティ形成 | 頻度は少ない |
会社登記の可否 | ほぼ可能 |
実際のところ、シェアオフィスとコワーキングスペースを明確に分けていないケースが多くあります。シェアオフィスと謳いながらコミュニティ形成に積極的であったり、逆にコワーキングスペースに個室ブースがあったりするためです。
そこで明確な違いをイメージするなら、上にある画像のように仕切りがあるかどうかで考えれば良いかもしれません。
また利用料金もコワーキングスペースに比べて、若干ながら高めです。
多くのシェアオフィスが月額制を採用しており、時間制利用のドロップインは多くありません。ドロップインがあったとしても1時間当たり数千円かかるケースもあります。
そのためシェアオフィスは、コワーキングスペースよりじっくり仕事をしたい方にオススメと言えるでしょう。
シェアオフィスのメリット・デメリット
コワーキングスペースによく似たシェアオフィスですが、メリットとデメリットを比較してみましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・比較的にイニシャルコストを抑えられる ・Wi-Fiや複合機などの必要な設備が利用可能 ・ビジネス面から見ても立地が良い ・営業時間内ならいつでも利用可能 ・必要な時だけという利用方法もOK |
・周りに人がいるため集中できない ・情報セキュリティ面で不安がある ・無料Wi-Fiは共有して使うため通信速度が落ちる ・フリーアドレスなのに場所を占有する人がいる ・会社登記後に運営会社が倒産するリスク |
コワーキングスペースやバーチャルオフィスにも共通して言えることですが、各オフィスの運営母体が倒産すると登記上の住所を変更しなければいけません。登記している住所を変更するだけでも数万円の費用がかかる上、取引先の信用問題にも関わります。
そのためいくら集中できるからといって、いつ行っても利用者がいないシェアオフィスでの登記は注意すべきかもしれません。
バーチャルオフィス・コワーキングスペース・シェアオフィスの比較と使い分け
では最後に「バーチャルオフィス」「コワーキングスペース」「シェアオフィス」の3つを、一覧で比較してみましょう。
バーチャルオフィス | コワーキングスペース | シェアオフィス | |
---|---|---|---|
場所の選びやすさ | 選びやすい | 運営会社による | 運営会社による |
利用可能時間 | 自由 | 利用プランによる | 利用プランによる |
料金・費用 | 安い | 安い | 安め |
他利用者とのコミュニティ形成 | 不要 | 可能 | 頻度は少ない |
会社登記の可否 | 可能 | ほぼ可能 | ほぼ可能 |
メリット | ・オフィス利用料を大幅に削減できる ・起業時の費用が安く済む ・プライバシーの保護が可能 ・都心一等地の住所で開業できる ・事業開始までがスピーディ |
・低いコストで利用できる ・必要な設備を自由に利用できる ・利用プランのバリエーションが豊富 ・出張や商談前の打ち合わせに利用できる ・人脈を広げられる |
・比較的にイニシャルコストを抑えられる ・Wi-Fiやコピー機などの必要な設備が利用可能 ・ビジネス面から見ても立地が良い ・営業時間内ならいつでも利用可能 ・必要な時だけという利用方法もOK |
デメリット | ・法人名義の銀行口座が開設しづらい ・事業内容によって許認可が取れない ・他の会社と住所が重複する ・郵便物の受け取りに時間がかかる ・融資や労務関連の申請における信用が低い |
・周りに人がいるため集中できない ・コミュニティが内輪ノリになりがち ・人が多いと作業スペースが狭くなる ・必ずしも良いコミュニティを築けるとは限らない ・業務上の情報漏洩の可能性 |
・周りに人がいるため集中できない ・情報セキュリティ面で不安がある ・無料Wi-Fiは共有して使うため通信速度が落ちる ・フリーアドレスなのに場所を占有する人がいる ・会社登記後に運営会社が倒産するリスク |
3つのオフィス形態で大きく違うのは、「オフィスの実態があるかどうか」「コミュニティの有無」といった点でしょう。
先述の通り、コワーキングスペースとシェアオフィスに明確な違いはなく、シェアオフィスにおいても人間関係がネックになるケースもあります。
バーチャルオフィスは、仕事をする場所も時間も完全に自由です。オフィスインテリアや機器の有無という点で他オフィスには敵いませんが、自宅で気楽に仕事ができるというのは大きな魅力ではないでしょうか。
ただ最近では、個室ブースや会議スペースをレンタルしているバーチャルオフィスも増えています。
もちろん設備は共有で使用でき、電話や郵便の転送サービスまで提供しているバーチャルオフィスも珍しくありません。
今やオフィスは、全国展開しているシェアオフィスもあれば地方の古民家を活用したコリビングといったオフィスなんてものまで実に様々な形態があります。
一つの空間をシェアスペースとして複数人で利用するのか、それとも仕事に集中するために個人の空間を最優先にするのか。自分のワークスタイルに合わせてオフィス形態を使い分けられるのは、現代ならではと言えるでしょう。